2013年 09月 16日
閉鎖の経緯説明 |
大変長らくお待たせしましたが、ここで一度本サイト閉鎖の経緯をご説明いたします。皆さん恐らくご想像の通り、著作権に関することです。JASRAC(日本音楽著作権協会)より、今までJASRAC管理曲を掲載していた分の利用料の精算を求めるメールが来たため、払うことになった場合の負担を限定するため、やむを得ず一時的に閉鎖しました。JASRACとは数週間に渡り、著作権法と彼らの利用規約を巡ってやり取りをしましたが、今だはっきりとした解決には至っておりません。ただ、JASRACからも返事が来なくなったため、一旦ここで経緯説明をしておきたいと思います。
まず、JASRACから来たメールの内容は以下のようなものでした。
-----------以下抜粋-------------
音楽には作詞者・作曲者の権利(著作権)があり、著作権法で保護されています。
ウェブサイトで音楽ファイルや歌詞の掲載により管理楽曲を利用する場合には、事前に当協会に利用許諾の申込をし、当協会の許諾を得なければなりません。
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つきましては、本メール受信後 5日以内に、
(1)管理楽曲の利用を開始された時から現在までの利用期間分の清算手続
(2)今後の利用許諾手続
をJASRACオンラインライセンス 窓口 J-TAKT(https://j-takt.jasrac.or.jp)より行ってください。
なお、本メールを受信された後に、管理楽曲をウェブサイトから削除されて、今後、管理楽曲の利用を行わない場合でも、必ず上記(1)の手続きをお願いいたします。
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-----------以上------------------
これを読む限り、当たり前のことを言っているようですが、実はあくまでも一般論をぶつけて来ているに過ぎません。何故なら、本サイトのように外国曲の歌詞を非商用で掲載することは、「外国曲の可視的利用」と言い、JASRACの許諾の範囲外だからです。歌詞の掲載は出版権、その翻訳は翻案権と言い、いずれも本国の権利者が管理しているため、日本のサブパブリッシャーを通じて本国のオリジナルパブリッシャーの許諾を得、そのサブパブリッシャーがJASRACと契約があって初めてその利用料をJASRACが請求することができるということです。ですから、そもそもその許諾がない状態で、JASRACが関与する余地はないというのが私の見解です。
そこで私は次の二点を確認すべく質問を送りました。
1.本件の外国曲の出版権と翻案権は原著作者が保有しており、JASRACはその権利者ではない。
2.したがって、権利者でないJASRACが利用料を請求する法的根拠はない。
これに対し、JASRACは権利者ではないことには同意しましたが、利用料の請求の根拠は出版権や翻案権に基づくものではなく、著作権法第28条の二次著作物に対する権利に基づくと回答して来ました。そしてその利用料は、JASRACの使用料規定第十一節1(4)の非商用配信の②ストリーム形式を適用し、個人が非営利で利用する場合の10曲につき年1万円であると主張して来ました。全部で88曲あるので、年間8万8千円×約3年半分の約30万円ほどになります。
→JASRAC使用料規定
しかし、彼らが根拠とした著作権法第28条は以下のように定めています。
『第28条 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する』
つまり、ここには二次著作者、すなわち翻訳を書いた私と同一の権利を原著作者が保有すると書かれているに過ぎません。そこで、私は次のような見解をJASRACに示しました。
【利用料について】
1.JASRACの使用料規定第十一節1(4)の②には「外国曲を除く」と明記してあり、その利用料を適用することは明らかな矛盾である。
2.JASRACは外国曲の出版権も翻案権も管理しておらず、JASRACが利用料を徴収するとすれば、オリジナルパブリッシャーの許諾を得、その委託を受けた国内のサブパブリッシャーがJASRACと契約している場合であるが、そもそもその許諾自体がない本件において、JASRACが関与する余地はない。
3.JASRACが課金の根拠とする著作権法28条は、単に二次著作者と同一の権利を原著作者が保有すると定めているに過ぎず、本件では二次著作者は一円の対価も得ていない。それと同一の権利を原著作者に認めるとしても、それが金銭になるとは認めがたい。
【著作権侵害について】
1.本件が著作権侵害にあたるとすれば、出版権、翻案権の侵害であるが、そのいずれも本国の原著作者が管理しており、JASRACには委託されていない。
2.著作権侵害は親告罪であり、権利者からの親告によって成り立つ。したがって本件では、JASRACは親告者になり得ず、本国の原著作者からの親告がなければ成立しない。
結局、これらの見解を示した後、JASRACからの返信は途絶えました。彼らがどういう判断をしたのかはわかりませんが、二週間以上ナシのつぶてなので、一応の解決を見たとしてご報告です。今後どうするか、そして著作権法について感じたことなどについては、また別途アップする予定です。これは我々みんながもっと考えなければいけない問題だと思います。
by mjwords
| 2013-09-16 13:47
| 訳者のひとりごと